今回は、シャントに使用されるグラフト(人工血管)の材質特徴についてです。
グラフトの材質によって、早期穿刺が可能であったり術後の浮腫が多かったりと様々な違いがあります。
目次
人工血管の種類と特徴
ePTFE-expanded polytetrafluoroethylene
- 多用されるグラフト
- 手術の操作性が良好
- キンク(屈曲)しにくいので関節をまたいでもある程度は問題ない。
- バリエーションが豊富。早期穿刺可能(穿刺が術後24h以内から可能だが推奨手順あり)なものやヘパリンコーティングされているものもある。
- 穿刺は基本2週間以降で可能。
- 血清腫が起きる可能性がある。
- エコーで内腔が描出される。
エコーでは壁が二重線のように描出されます。
ポリウレタン(PU)-Polyurethane
- セルフシーリングで早期穿刺が可能
- 血清腫が少ない
- シャント音が小さい。
- 手術の操作性はコツを要する。(キンクがやや起こりやすいが改善されてきている)
- エコーでは見えない。しかし繰り返し穿刺を行うと徐々に内腔が描出される。
※セルフシーリングとは人工血管の素材の力で針穴を塞ぐ機能のこと。
内膜・中膜・外膜からの3層構造で組成されている。
PEP(例:グラシル)-polyolefin elastomer polyester
- セルフシーリングにより早期穿刺が可能
- 血清腫が少ない
- 手術の操作性はコツを要する。
- PUと違ってエコーでは内腔が描出される。
- グラフトの屈曲防止目的でpolyesterの補強材がらせん状に巻かれており、この補強材を外すと容易に屈曲してしまう。
- PUと比較して高キンク性が高いため肘を超えて移植することも可能。
- ループ状に作成する場合は頂部を強い角度にしないことを推奨されている。
エコーでは壁に補強材が描出されます。
各人工血管ごとの特徴まとめ
ePTFE | ePTFE
(ヘパリンコーティング) |
ePTFE
(3層構造) |
PU
(ポリウレタン) |
PEP
(グラシル等) |
|
早期穿刺 | 不可 | 不可 | 可 | 可 | 可 |
屈曲(キンク) | なりにくい | なりにくい | なりにくい | なりやすい | なりやすい |
血清腫 | あり | あり | 少ない | ない | ない |
内腔エコー評価 | 可 | 可 | 可 | 不可(使用年数がたてば可) | 可 |
個人的経験になりますが、ePTFEとセルフシーリングの人工血管では止血時間が違うように感じます。
セルフシーリングの方が止血時間は短めです。
おそらくePTFEでは針穴が開いた状態で止血となるためだと思います。
どのグラフトを選ぶかは術者の好みや、早期穿刺の必要性・手術の難易度など様々な要因で決定されます。
参考文献
春口洋昭編 (2011-2013)『バスキュラーアクセス超音波テキスト』P119-120 医歯薬出版株式会社
春口洋昭 (2014)『臨床透析 2014Vol30 AVF機能不全時のAVG選択理由と形式・部位』P173-179 株式会社日本メディカルセンター