シャントエコーによる狭窄状態判別

シャントエコーを行った場合に結果を報告書に書かなければなりません。

その際、何らかのイベントが見つかることがあると思います。

代表的なVAトラブルとしては血管狭窄が挙げられます。

狭窄といっても様々な状態があり、VAIVTの際その状態によってバルーンやデバイスを使い分けていく必要があります。

今回は、狭窄状態の判別について書いていきます。

 

狭窄状態の判別

シャントエコーでの狭窄を発見した場合、まず短軸・長軸両方で観察を行います。
常に真っすぐで蛇行が無く同じ太さなら短軸長軸どちらかでもいいと思いますが、実際はそのような血管が狭窄しているのは珍しく、何らかの変化が見られます。

どちらも得手不得手の特性があるので両方の画像で観察するのが大事だと思います。

狭窄の状態は大きく分けて、
内膜肥厚による狭窄:内膜肥厚型
血管収縮による狭窄:血管収縮型
内膜の肥厚と血管の収縮両方が見られる:混合型
静脈弁の硬化による狭窄:弁型
石灰化による狭窄:石灰化型

これら状態に分かれると思います。

静脈弁による狭窄は長軸画像での観察で容易に判断でき、石灰化による狭窄は高輝度エコー画像による判別が可能です。

内膜肥厚型なのか血管収縮型なのかは論文等による報告されている方法で判別が可能です。
混合型に関しては、上記報告の計算式から自施設内で決められた数値を用いることで判別可能かと思います。

 

内膜肥厚型か血管収縮型か?

エコー画像だけでも大体の割合で判別は可能ですが、主観評価になるのでやはり客観的に評価できる指標を用いるべきだと思います。

勤め先では判別の計算式は、下記を用いています。

血管内腔の一番狭い部位を計測に用い、
((血管外径-血管内径)/血管外径)×100[%]

上記式で出された値で、

50%以上が内膜肥厚型
50%以下が血管収縮型

と判別し、混合型に関しては施設で決められた値内であれば混合型も判別に使用されます。(大体35%前後)

Chen等報告では、内膜肥厚の厚さが0.6mm以上なども項目に挙げられていたりします。
もしVA管理委員会のようなものが施設にあれば話し合って施設内での統一評価にしてみるのがいいかと思います。

 

状態判別がもたらす治療の変化

状態がわかると何が違うのかというと、VAIVT時に使用されるバルーンをより効果的なものに変更できる可能性があります。

最近承認されたシャント用DCBなどは、コーティングされている薬剤から新生内膜の増殖を抑制する事を目的としており、内膜肥厚型に効果があるのではないかと期待されています。

石灰化や弁の硬化がある狭窄であればセミコンバルーンのような柔らかいバルーンよりノンコンのような固いバルーンやカッティングやスコアリングといった特殊なバルーンを使用するといった選択肢も考えられます。

このように、狭窄は様々な状態による結果引き起こされたものであるので、それに合った治療が求められるため、狭窄状態の把握は重要と考えられます。

 

 

参考文献
Suemitsu Kotaro,Shiraki Tatsuya,Iida Osamu,et al.Impact of Lesion Morphology on Durability After Angioplasty of Failed Arteriovenous Fistulas in Hemodialysis Patients.Journal of Endovascular Therapy 2018; 25: 649-54.

Chen Li,Zhang Weichen,Tan Jinyun,et al.Morphological Lesion Types Are Associated with Primary and Secondary Patency Rates after High-Pressure Balloon Angioplasty for Dysfunctional Arteriovenous Fistulas.Blood Purification 2021; 1-10.

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