透析液の日常管理!残留塩素測定器DR300について

皆さんの施設でも日常的に活性炭素ろ過装置出口の遊離塩素・全塩素測定を行っていると思います。

今回、当院で試験的に使用中のDR300ポケット残留塩素計について使用経験を書いていきます。

今回紹介の機器は医療機器ではありません。

 

残留塩素測定の技士会での指針では

〔塩素濃度チェック法〕
残留塩素濃度測定には「DPD(ジエチル―P フェニレンジアミン硫酸塩)法
またはこれと同等以上の精度を有する方法」を用いる。
総塩素濃度=遊離塩素+結合塩素(クロラミン)であるが、通常の水道水は遊
離塩素で消毒されているため残留塩素測定=遊離塩素測定、として運用されて
きた。近年、地下水なども透析用水として利用されている。その場合では土壌
に含まれるアンモニアと消毒用の遊離塩素が結合しクロラミンが生成される。
生成されたクロラミンが活性炭濾過装置や逆浸透装置の処理能力を超えた場合
には透析液中に混入する可能性は否定できず、溶血が発生した事例も報告され
ている。よって総塩素濃度と遊離塩素濃度を測定し、その差より結合塩素濃度
を確認し記録することを推奨する。

引用文献

透析液清浄化ガイドラインVer2.01 2014年3月11日(公社)日本臨床工学技士会 透析液等安全委員会

技士会の透析液清浄化ガイドラインVer2.01ではこのように示されています。

当院でもこれに準じた測定を行っており、DPD法の遊離塩素測定と試験紙タイプの全塩素測定で目視による色の変化で確認を行っています。

ただ、全残留塩素の測定値0.1㎎/Lの色の変化が試験紙タイプではかなりわかりづらい・・・
遊離塩素に関しても同様に変化がわかりづらく、たぶん0.1mg/L未満…といった評価をしていました。

そこで、今年度のJSDTで見せてもらえたポケット残留塩素計DR300を試験的に運用してみることになりました。

 

DR300ポケット残留塩素計について

特徴

ポケットと名がついているだけあって大きさはiPhone Plusを一回り大きくしたような感じ。

なんでも屋ME
ボタンも必要最小限

測定時はこのような形になります。

起動のバッテリーは単四アルカリ電池4本で約5000回(バックライト未使用)測定可能です。

 

精度

DR300ポケット残留塩素計はDPD法を用いて測定します。

測定レンジは2種類あり、LR(低レンジ)HR(高レンジ)とで精度が異なります。

遊離塩素・全塩素ともに精度と測定範囲は同じです。

LR精度:1.00±0.05㎎/L CL2

測定範囲:0.02~2.00mg/Lまで

 

HR精度:5.0±0.2mg/L Cl2

測定範囲:0.1~8.0mg/Lまで

透析液清浄化ガイドラインVer2.01 で示されている全残留塩素0.1㎎/L以下とされているので、透析室での残留塩素測定はLRのレンジを使用します。

 

測定方法の種類と方法

種類

測定方法種類は3種類あります。

  • パウダーピロー法
  • AccuVacアンプル法(LRのみ)
  • スイフテストディスペンサー法

パウダーピロー法はサンプルに1回使いきりの試薬を入れて撹拌して測定する方法。

AccuVac法はAccuVacアンプルを使用した方法で使用コストも高く、河川などでの測定に使用されます。

スイフテストディスペンサー法はパウダーピローと同じように試薬を入れて測定する方法ですが、スイフテストディスペンサーにより試薬を注入して行います。パウダーピロー法との違いは使いきりの試薬を機械により注入するかどうかの違い程度です。

 

測定方法

  1. ガラス製のサンプル管(LR用)にサンプルを入れて共洗いする。(3回以上)

  1. サンプル管にサンプルを10ml注入する。
  2. 測定部のカバーを外し、サンプル管のひし形マークが手前に来るようにセット。
  3. 測定部カバーを取り付け、ゼロキーを押し表示値が「0.00」になっていることを確認後サンプル管を取り出す。
  4. 別のサンプル管に10mlサンプルを取る(3回以上共洗い)
  5. 遊離塩素測定なら遊離塩素測定試薬を注入。
    全塩素測定なら全塩素測定試薬を注入。

  1. サンプル管のキャップを締めて泡立たないように約20秒間反転させて混合。
  2. 遊離塩素測定の場合は試薬を入れてから1分以内に測定。
    全塩素測定の場合は試薬を注入後3分間待ってから測定。
  3. 測定後は精製水ですぐにキャップとサンプル管を洗い流し乾燥させる。

 

販売元に問い合わせたところ、①のゼロ点調整に使用するサンプルは蒸留水などで行ってもよいとの事でした。また、ゼロ点用のサンプル管を作っておく方法を取られている施設もあるとの事でした。

全塩素測定の試薬注入後3分待つのは測定の精度を上げるためには必須なようで短縮は出来ないとの事でした。

 

 

測定妨害物質

  • 酸度:CaCo3として150㎎/Lを超えると十分な発色が得られず、退色が起こることがある。
  • アルカリ度:CaCo3として250㎎/Lを超えると十分な発色が得られず、退色が起こることがある。
  • 臭素 Br2・二酸化塩素ClO2・無機クロラミン・オゾン:全ての濃度でプラス誤差になる。
  • 有機クロラミン:全塩素測定時に妨害の恐れがある。
  • 硬度:CaCo3として1000㎎/L未満であれば影響はない。
  • 酸化マンガン(Mn4・Mn7)・酸化クロム(Cr6:サンプルの前処理が必要。
  • モノクロラミン:LRの場合試薬を加えてから時間経過で測定値が徐々に高値になっていくことがある。
    HRの場合はモノクロラミン濃度やサンプルの温度によってプラスの誤差。例:3.5 mg/L Cl2・30℃で+0.8の誤差。
  • 過酸化物:妨害の恐れがある。
  • PH緩衝能の高いサンプル・極端なPHサンプル:試薬に含まれるバッファーの緩衝能を超える場合があるため、サンプルのPH調整が必要で測定結果は添加液による希釈分補正する必要がある。
  • 酸化性物質及び還元性物質:プラス誤差の原因となりえる。

 

実際に使用しての感想

遊離塩素測定に関しては、全塩素測定と違い試薬による反応を待つ必要がないため素早くでき、尚且つ目視による評価ではないので評価としての精度は高く使い勝手もいいように感じました。

全塩素測定ではどうしても待ちの時間があるので、今まですぐに出来ていたことが少しの時間かかるためそこに使い勝手の悪さを感じてしまいました。

また、試薬の封が少し開けにくく点線通りに破いてもうまく破れていないことも・・・

これに関してはスイフテストディスペンサーで対処可能と思います。

 

コスト面としては、初期投資に本体73000円(税抜き)とパウダーピロー法試薬(遊離・全塩素ともに3600円/100回)がかかり割高に思えますが、勤め先の施設で使用している試薬に比べれば比較的経済的であるようなので数年使用すれば元は取れるような感じになると思います。

定価ベースなのでここからある程度値引きもあると思います。

 

今回初めて残留塩素のディジタル表示の評価を行い、今までの試薬と比べて評価しやすくなったことは確かですしコスト面でも長期運用を考えれば比較的経済的であると考えられるので、導入に関して他の機器とも比較しながら進めていけたらなと思います。

 

参考文献

DR300ポケット残留塩素計 測定手順書(初版) 2019年5月8日 東亜ディーケーケー株式会社

認定血液浄化指定講習会テキスト(第一版)清浄化管理 P120  中山裕一  2018年11月22日 公益社団法人 日本臨床工学技士会

最新情報をチェックしよう!