四月から透析室配属になる方もおられると思いますので、改めて、シャントPTAについて説明!
VAIVTや四肢EVTなど施設によって言われ方は様々です。
PTA:Percutaneous Transluminal Angioplastyの略で経皮的血管形成術と訳されます。
VAIVT:Vascular Access Interventional Therapy 慢性血液透析用バスキュラーアクセストラブルに対するIVR治療
IVR:Interventional Radiology X線透視やCT・超音波画像など画像診断装置を使用して体内にカテーテルを挿入して治療する方法
EVT:EndoVascular Treatment 末梢動脈疾患のカテーテルによる治療
どの様な症状が適応なの?
症状や部位により適応・非適応は様々で一概には言えませんが、当院では以下を適応基準ととらえています。
- 血管内径が2㎜以下
- FVが350ml/min以下
- RIが0.65以上
- 静脈圧180mmHg以上
- 静脈圧高値によるシャント肢などの浮腫みの出現
- 狭窄音・拍動音
- 触診による凹みの確認
- シャント肢挙上による血管の凹みの有無
- 脱血不良
これらすべてが当てはまれば治療というわけではなく、総合的に判断しての治療適応となっています。
例えば機能評価でのFV・RIはシャント肢の分枝数によっても変化するので上記項目に当てはまらないこともあります。
これらの状態を正確に医師へ伝えるのも臨床工学技士をはじめとする透析室のスタッフの務めと思っています。
どの様に行うの?
まずは、上記理学所見やシャントエコーで狭窄もしくは閉塞が発生しているというのを医師に診断してもらいます。
その後、原因部位に対して治療が必要で尚且つ血管拡張もしくは血栓除去が必要と判断された場合にPTAを行います。
治療を行う前に必要な情報を整理し、医師に伝えておくのも非常に重要です。
血管拡張術の大まかな流れ
- 上腕動脈穿刺あるいはシャント末梢側穿刺。
- 造影にて狭窄部位の把握とシャント肢全体の状態確認。
- 病変部よりも末梢側もしくは中枢側からシース挿入。
- ガイドワイヤー(GW)挿入。
- 造影(無い場合も)
- バルーンを挿入後造影(無い場合も)
- POBA(拡張・インフレーション)
- 造影
- 問題なければ少しの間待機・拡張不足が見られた場合は追加拡張やバルーンのサイズアップか種類の変更など行う。(⑥か⑦に戻る)
- 造影
- 問題なければ手技終了・拡張不足が見られた場合は追加拡張やバルーンのサイズアップか種類の変更など行う(⑥か⑦に戻る)
- 止血
血栓除去術の大まかな流れ
- 上腕動脈穿刺あるいはシャント末梢側穿刺。
- 造影にて狭窄部位の把握とシャント肢全体の状態確認。
- 病変部よりも末梢側もしくは中枢側からシース挿入。
- ガイドワイヤー(GW)挿入。
- 造影(無い場合も)
- 血栓吸引器挿入後血栓を吸引
- 血栓が除去できているか確認。
- 血栓が除去できていない場合は⑥に戻る。除去できている場合は造影で狭窄部位・シャント肢全体の状態確認。
- 狭窄が確認出来たらバルーンを挿入後造影(無い場合も)
- POBA(拡張・インフレーション)
- 造影
- 問題なければ少しの間待機・拡張不足が見られた場合は追加拡張やバルーンのサイズアップか種類の変更など行う。(⑥か⑦に戻る)
- 造影
- 問題なければ手技終了・拡張不足が見られた場合は追加拡張やバルーンのサイズアップか種類の変更など行う(⑥か⑦に戻る)
- 止血
以上が血管拡張術及び血栓除去術の大まかな流れです。
上腕動脈を逆行性(末梢側に向かって穿刺)に穿刺してシースを挿入し、吻合部からシャント肢へGWを通して治療したりする場合もありますし、本当に施設や状態にによって様々な治療法があります!
診療報酬は?
K616-4 経皮的シャント拡張術・血栓除去術で18080点ですが、3か月に1回しか算定されません。(2019年3月データ)
この3か月に1度しか算定できないというのがネックで、どの様にして繰り返す狭窄に対して3か月以上開存させるかを考えなければいけません。
長期開存を目指すためには?
長期開存を目指すためには、日ごろのVA管理や穿刺ミスを極力起こさないようにすることなど普段の透析業務で気を付けていくことをはじめ、最近では透析学会や関連雑誌などで発表・掲載があったシャントマッサージなども有効と考えられます。
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ゆっくり膨らます?スローインフレーションについて 今回はスローインフレーションについてです。 シャントPTA時や下肢EVT時のインフレーションの仕方は現在、様々な先生方により研究報告されています。 その中でも最近の研究ではスコ[…]
最後に
シャントPTAについて簡単に解説してみましたがいかがでしたでしょうか?
この分野は今後も新しい手技やデバイスの進化も出てくると思いますので変化がみられると思います。
今後も臨床工学技士としてアンテナを張り巡らせながら医師や他のスタッフと協力して治療にあたっていきたいと考えています!
参考文献
今日の臨床サポート https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_2_10_1_8_2/k616-4.html 2019年3月9日アクセス