今回は心臓血管カテーテル検査で使用される血管内光断層撮影用カテーテルOFDI/OCTについて解説します。
OFDIとOCTですが原理は同じで扱っているメーカーが違い名称が異なり使用される機器も違います。
OFDIとはOptical Frequency Domain Imagingの略称。
OCTとはOptical Coherence Tomographyの略称。
どちらも光干渉断層診断のことを指します。
心臓血管カテーテルでよく使われるイメージングデバイスとしてIVUS(intravascular ultrasound)が使用されますがこちらは血管内超音波検査となり原理が違います。
OFDI/OCTとIVUSの違い
IVUSは血管内超音波検査・OFDI/OCTは光干渉断層診断となっているわけですが一番の違いは表示される画像の組織像が違います。
IVUSは超音波を原理としている為、超音波が通過できない石灰化病変は詳細な映像描写ができません。
ですが、OFDI/OCTはレーザー光を使用した原理となっている為、石灰化病変がきれいに描写されます。
他にはOFDI/OCTは内腔からの到達深度が浅く血管外への断面像は描写されにくくなっているのに対し、IVUSは血管外への映像描写は石灰化組織がなければ容易に行えます。
このように同じ血管内イメージングデバイスでありますが得意とする分野が違い、造影CTによる評価などを考慮してどちらを利用するか選択する場合があります。
OFDI/OCTとIVUSの有効例
OFDI/OCT
- 石灰化病変
IVUSでは表示しづらい石灰化病変を明瞭に描写できるためOFDI/OCTは得意といえます。
石灰化の厚さや分布もわかりやすく、ロータブレーション使用時にも有効とされています。 - 分岐部病変
IVUSには無い機能である3D再構築機能があり、側枝入り口部でのステントリンクの位置やステントストラットへのガイドワイヤークロス状態の確認など簡単に評価可能です。 - ステント再狭窄
OFDI/OCTはステント内に発生した内膜を明瞭に描出し、その組織性状を判別しやすくします。また、バルーン拡張後の内腔測定も容易です。
IVUS
- 冠動脈起始部病変
OFDI/OCTではIVUSのように常に血管内を写し出すことは出来ず、ガイディング付近は特に描写しづらいです。
また無理なガイディング挿入でフラッシングし起始部の損傷を来す可能性もあります。
そのため、このような病変部はIVUS使用が有効とされています。 - 重症心不全
OFDI/OCTは冠動脈内の血液除去を行うことで映像を描出します。そのため造影剤あるいは生理食塩水を注入しフラッシングします。
このフラッシングにより容量負荷(volume overload)となり、心不全を憎悪させる危険性があります。
IVUSはフラッシングの必要がありません。 - 腎機能低下症例
OFDI/OCTは②で記載したフラッシングの際に造影剤を使用する為全体の使用量が増加します。上記でも記載した通り、IVUSにフラッシングは必要なく腎機能に影響を与えない血管内観察が可能です。
最近ではOFDI/OCT使用の際に低分子デキストランL使用で造影剤の使用量を減らすことが出来るためこちらの薬剤が使用可能なら軽度腎機能悪化症例でもOFDI/OCTは使用できるかもしれません。 - 慢性完全閉塞(CTO:chronic total occlusion)病変
ガイドワイヤー(GW)や各デバイスの位置確認・血管径を連続的に見る必要があり、描出のたびにフラッシングするOFDI/OCTは不向きでIVUSを利用した治療がメインになりやすいです。
OFDIとOCTの画像
二つとも光干渉断層診断ではありますが、開発メーカーが違うためか基本画像が違います。
OCT
OCTはGolden Imageと呼ばれるやや黄色の濃淡っぽい画像になっており、レーザー光が届かない部位例えば血管外はやや黒っぽい黄色になります。
参考画像として、メーカーリンクを参考してください(当院には置いてませんので・・・)
Abbott:ILUMIEN™ OCT Imaging System (FD-OCT)
OFDI
OFDIは解像度の高さをより引き出すためにグレースケール(白黒画像)となっています。
メーカーさんに聞いたところIVUSとの映像ギャップを無くすためと言っていましたが・・・
こちらの画像は自作ファントムでの画像となっています。
カテーテルの検査・治療時に勤め先では臨床工学技士がセカンドあるいはサードに入る場合があります。 その際デバイスの知識を知っておくことでスムーズな手技進行を行えたり、提案やディスカッションを求められるケースもあります。 僕は本など[…]
実際の血管画像はメーカーHPでご参照ください。
テルモ:ルナウェーブとファーストビュー紹介
実はOFDIでもOCT画像っぽくも出来ます!
OFDIの画面右下のこのマークから選択可能です!
OCTっぽい画像
他にも画像は青色の濃淡もあり個人的になばなの里カラーと呼んでるモードもあります。
プルバックスピード
プルバックとは血管内を自動もしくはマニュアルでカテーテルを引いてくる動作です。
OFDIの自作ファントムプルバック映像です
OFDI/OCTでは基本的に機械で自動引きとなります。
IVUSも機械による自動引きが基本ですが、マニュアル(カテーテル操作者)が引く場合もあります。
以下に自動引きでのスピード比較を記載します。
OFDI(テルモ社) | OCT(Abbott) | IVUS | |
プルバックスピード(mm/sec) | 0・20・40 5㎜/secごとに変更可能 |
18・36 Stationary(静止記録) |
0.5~1.0 |
血流の除去 | 造影剤or生理食塩水 | 造影剤or生理食塩水 | 不要 |
比較するとIVUSよりも高速で引けることがわかると思います。
これは血流の除去が必要な為で、IVUS並みのスピードでは血流除去に多量の造影剤を使用してしまうためです。
ですが、キレイな画像を描出しようとする際はプルバックスピードはゆっくりにしたほうがいいとされています。
この辺りは施設やDrの考えによります。
まとめ
OFDI/OCTはレーザー光を用いた映像描出。
有効な症例としては石灰化が重度や分岐がある病変・ステント内再狭窄症例。
画像描出時は血流の除去が必要。
プルバックスピードをゆっくりにすることでキレイな画像を描出することが出来る。
参考文献
志手淳也,PCIで使い倒す OCT/OFDI徹底活用術[大阪済生会中津病院編],2019.4.1