今回はペースメーカのリードについてです。
リードとはペースメーカ本体から心房・心室にパルスを心筋へ伝えるための導線です。
ペーシングリードとも呼ばれ、導線と絶縁体で構成され遠位側には電極が配置されています。
様々な種類があり、各種特徴があります。
リードの種類
バイポーラリード:Bipolar Lead
バイポーラリードは心腔内に位置する部分に陽極と陰極の2つの電極が取り付けられています。
陰極部はリードの先端部分にあるためチップ電極と呼ばれたり、Distal電極と呼ばれたりもします。
陽極部は先端より手前側(ペースメーカ本体側)にリング状に取り付けられているのでリング電極と呼ばれたり、Proximal電極と呼ばれたりしています。
特徴
- リード構造が複雑でユニポーラと比較して、リードの断線やリークの可能性が高い
- 大胸筋や横隔膜のtwitchingを起こしにくい
- 心電図などでペーシングのスパイク波形が見にくい(最近はモニタにスパイク波形を目立たせる機能もある)
- 電磁干渉(EMI)の影響を受けにくい
- 筋電位によるオーバーセンシングを起こしにくい
- ユニポーラとしての切り替えができる
最近は、筋電位や電磁干渉によるオーバーセンシングを防ぐ目的で新規に植え込みを行う際はバイポーラを選択することが多いです。
ユニポーラリード:Unipolar Lead
ユニポーラリードはリードの先端にのみ陰極部が取り付けられています。
陽極部はバイポーラリードとは違いリード本体にあるのではなく、ペースメーカのケースの片面または両面を使用しています。
特徴
- リードの構造が単純なためバイポーラと比較してリードの断線・リークの可能性が低い
- 大胸筋や横隔膜のtwitchingを起こしやすい
- 心電図などでペーシングのスパイク波形が見やすい
- 電磁干渉(EMI)の影響を受けやすい
- 筋電位によるオーバーセンシングを起こしやすい
リードの形
心内膜リード
鎖骨下静脈や橈側皮静脈などの静脈からの挿入で心腔内に留置します。
心房専用リードは右心耳に先端部を固定するため、リード先端がJ型になっています。
VDDで使うシングルパルスリードは心房収縮を感知するためにリードの途中に心房センシング用の電極がついています。
スクリューリード
Activa fixationリードとも呼ばれています。
リードの先端にコルクスクリューのような物(ヘリックス)が取り付けられており、これを心腔内部へねじ込むことで固定されます。
目的の留置部位までリード操作がしやすいようにする為と安全に操作ができるようにする為にヘリックスがリード先端に格納されていたり、水溶性のカプセルで保護されているものもあります。
ヘリックスによって心腔内の様々な部位に固定できるため、心房に使用する場合は右心耳にかけやすいようにJ型にしておく必要がなく
そのため心房リードと心室リードとの区別がない場合が多く、心房に使用する場合はJ型のスタイレットを用いて、心室ではストレート型のスタイレットと使い分けることが多いです。
長所
- リードの脱落(ディスロッジ)が少ない。
- 心腔内の様々な場所に留置可能(例:心室中隔など)
- 比較的リードの抜去が容易である
短所
- 留置する部位によっては穿孔を起こす場合がある。
タインリード・フィンリード
Passive fixationリードとも呼ばれています。
こちらはヘリックスのかわりにバドミントンで使うシャトルの羽のように突き出た突起物(タイン)やひれ状の突起物(フィン)が取り付けられており、この突起物を心腔内組織に引っ掛けることにより留置します。
長所
- ヘリックスではないため、穿孔のリスクは少ない
- 引っ掛けるだけなのでヘリックスより手技時間が短い
短所
- 留置する場所を選ぶ。
- リードの脱落(ディスロッジ)が起こりやすい
僕は一度研修で、豚の心臓を使ったリード留置し解剖をさせてもらったことがあります。
タインリードの「引っ掛ける」とは実際にどうなっているのかわからなかったのですが、この研修で「あぁなるほどこれは引っ掛けるだわ」というような構造を心臓はしていて勉強になったのを覚えています。
心臓の肉柱が無数にある部分が心尖部付近にあり、タインリードはそこに引っ掛けるようになっていました。
最後に
今回はリードの種類について簡単にまとめてみました。
最近は中隔ペーシングが主流なようでスクリューリードがよく出ている印象を受けますが、この辺りは手技をされる先生の好みや考え方によるところも大きいです。