シャントエコーについて簡単に説明!

シャント管理の最終兵器!シャントエコーとは

シャントエコーとはシャント(以後VA)に対して非侵襲的に血管内の状態(形態評価)やFV(Flow Volume)・RI(resistance index)といった機能評価を調べる検査の事です。

前提条件としてVA異常を示す理学所見がある事が重要です。

それぞれの評価説明

形態評価

主に短軸で血管径を測り長軸画像で血管の状態(狭窄などの範囲)を観察します。

どの超音波画像診断装置でもこの評価だけは可能です。

最近はエコー下穿刺に特化したモデルもあるため血管径の計測ができないモデルも存在しているみたいです。

 

機能評価

VAがどの程度機能しているかを見る検査でパルスドプラを使用しての検査となる為、超音波画像診断装置によっては測定できないことがあります。

また、パルスドプラ加算という点数が形態評価とは別で加算されます

機能評価略語説明

FV:VAにどの位血流が流れているかを見ています。
RI:血管抵抗指数といい狭窄の指標の一つです。(最大値は1.0)
PI(Pulsatility index):拍動係数
PSV:収縮期最高血流速度
EDV:拡張末期血流速度

FVはどこを計測しているの?

基本的にVAにおける機能評価は上腕動脈で計測します。

上腕動脈を計測する理由としては、比較的真っすぐな走行で血管がつぶされておらず波形が安定しているからと言われています。
ごくまれに上腕動脈の高位分岐症例がありその場合は勤め先では参考値としています。

 

結果を評価する!

形態評価・機能評価ができたら次に評価を行います。

評価方法は施設によりいろいろ基準がある為一概には言えません。

評価例として当院のスケールを紹介します。

当院の評価スケールは桃仁会病院様を参考にさせていただいてます。(現在は変更されているかもしれません)

当院での評価スケール

 

 

AVF 治療介入 絶対適応 相対適応 相対適応 経過観察
対応 治療 1ヶ月後フォロー 3ヶ月後フォロー 6ヶ月後フォロー
機能評価 FV 350ml/min未満 500ml/min未満 500ml/min未満

500ml/min以上

500ml/min以上
項目 RI 0.65以上 0.65以上 0.65以上

0.65以下

0.65以下
形態評価 狭窄血管径 2.0㎜以下 2.1~2.3㎜ 2.3~2.5㎜

2.6㎜以上

2.6以上
項目 狭窄率 50%以上

50%以下

 

 

 

 

 

AVG 治療介入 絶対適応 相対適応 経過観察
対応 治療 1ヶ月後フォロー 6ヶ月後フォロー
機能評価項目 FV 400ml/min以下

状態が良い時と比較して30%以下

400~600ml/min

状態が良い時と比較して30~50%

600ml/min以上

状態が良い時と比較して50%以上

理学所見項目 静脈圧

(Qb:200ml/min換算)

180mmHg以上

状態が良い時と比較して50%以上上昇

160mmHg以上

状態が良い時と比較して30~50%上昇

160mmHg以下

状態が良い時と比較して30%以下

 

 

 

 

 

最近では、ある程度患者のデータが溜まってきたので患者ごとに治療適応の血管径を定めていることもあります。
データがない場合は一律2.0mm以下での治療を紹介する方向ですが、理学所見の状態もみつつ1~2ヶ月先のフォローで良い場合もあるため、しっかりとした管理体制及び日頃の理学所見などNsや医師と連携して管理をしています。

 

シャントエコーで使用する物品について

エコープローブ

VAは比較的表在の血管であるため、リニアプローブを用います。

周波数は高周波数帯ほど表在領域が綺麗に抽出される為、出来るだけ高周波数帯を選ぶようにしています。

写真のリニアプローブは4MHz~18MHz帯

プローブの向きですが、プローブには必ずスキャンマーク(写真赤丸のでっぱり)と呼ばれるものがあり、それが必ず末梢側(画面右端)に向くようにしています

短軸では自分の正面に対して右側にスキャンマークが来るようにしています。

検査中に出来るだけ画面をずっと見ていたいため、スキャンマークの位置を固定することで方向を見失わないようにしています。

 

エコーゼリー

これは好みや、院内での採用物品によりけりですが固めのゼリーの方がVAの評価には適していると思います。

理由は、VAなどの表在血管はプローブを乗せただけで簡単に凹んでしまい測定の誤差が生まれる為、“プローブを浮かす”ということしなければなりません。

その為、柔らかいゼリーではどうしてもやりにくく、凹凸のある血管に対しても柔らかすぎるとすぐに垂れてしまい検査がやり辛くなってしまいます。

そんなことを言いつつも当院は柔らかいゼリーしかありませんが(笑)

柔らかいゼリーでもたくさん使うことで同様の効果は得られます。

 

シャントエコーではゼリーの量多めがコツです!

 

2020年8月14日追記
最近は富士フィルムのF JELLY PLUSというものに変わりました!
固めのHARDタイプで使いやすく、銀系抗菌剤が含まれているそうでVAへのエコーゼリーからの感染低減にも期待しています。
滅菌ゼリーとは違いますので使用後は消毒が必要です!

 

参考文献

春口洋昭編 (2011-2013)『バスキュラーアクセス超音波テキスト』P53 医歯薬出版株式会社

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