針の持ち方にはいろんな持ち方があり、穿刺部位によって角度も変わってきたりします。
今回は穿刺初心者のための穿刺針の持ち方や、穿刺部位による角度の変化を簡単に解説していきます!
わかりやすく素手で行っていますが、実際は手袋を装着して行ってください。
穿刺針の持ち方
通常の穿刺針の持ち方は写真の通りで、穿刺針の後ろ側の固い部分(内針部)を持ちます。
以下に一例をお見せします。
- シリンジタイプの針を持つところ
- クランプタイプの針を持つところ
これはなぜかというと、外針部を持ったやり方では血管壁を貫いた感触が手に伝わりずらく外針部は動いてしまう危険性もあるためです。
写真のような持ち方をすれば後述する穿刺の角度の幅が広がり浅い血管・太い血管に対応できます。
上記の持ち方では針先と持ち手の距離がかなり離れており、初めて穿刺を行う際は手が震えてうまく血管へ針先が定まらないといった事もあると思います。
そんな時は中指や薬指・小指を立てて患者さんの腕に密着させ「支え」を作ることで針を持った手を固定することができ、血管へ針先を定めやすくなります。
穿刺針の角度
穿刺針の角度ですが角度がつけばつくほど血管壁を突き破ってしまう可能性が高くなります。
一般的にテキストなどではAVF鋭角・AVG鈍角なんて言われてますが、あくまで目安程度と思ってください。分度器で測るわけにもいかないですしね。
僕がやっている大まかな基準は、
- 見た目や指でわかる浅い血管は針を寝かせ気味(角度を余りつけない)。
- 見た目や指で触知しづらい血管は針を立て気味(角度をつける)。AVGに関しても同様。
ですが、患者さんのVA場所によっては上記角度に当てはまらない場合もあります。
上腕部の穿刺角度
上腕部の穿刺は正直僕は苦手です・・・
苦手なりに自分で考えてみたり試行錯誤して失敗を減らしてきています。
上腕部での血管走行の特徴として、腕の力こぶ付近での穿刺になると思います。
この力こぶ付近での穿刺が失敗しやすい原因の一つで、血管が筋肉により上に盛り上がった状態になっている場合が多く、上記の穿刺角度で穿刺すると血管を突き破りやすくなっています。
矢印が針です!
対策として
- 肘関節部にタオルや固めのクッションなどを敷いた状態にし、穿刺角度が大きくならないようにする。
- 出来るだけ針を寝かせて、血管をすくい上げるイメージで穿刺する。
矢印が針です!
また、高齢の患者さんで筋肉量が少ない患者さんなどは肘よりも上にタオルやクッションを置くと刺しやすくなると思います。
深部側に向かっていく血管
深部側に向かっていく血管は触知できる部分は比較的浅い血管ですが、肘より上になるにしたがってより中枢深部へ潜っていく血管が多いです。
そういう血管に対して触知できる部分から穿刺すると針先が血管壁に当たってしまっていたり、突き破るケースが多いです。
対策としては触知できるところよりも少し末梢側から針を入れ、触知部分に針先が留置されるように穿刺をすると深部へ潜る前に留置できるため針先が血管壁に当たらず静脈圧が安定し、血管の突き破りなどのミスも少なくなると思います。
穿刺場所
脱血部の穿刺場所
脱血部の穿刺場所は、聴診や触診で良好なシャント音が聞こえる場所・適度なボリュームを感じれる場所です。
気を付けなければならないのが、吻合部付近を穿刺する場合で近すぎると止血が困難になる場合もありますし、ミスがあると血腫や偽腔形成などトラブルの原因となりやすいので注意が必要です。
具体的な離す距離は5㎝程度と言われていますが根拠は聞いたことないです・・・
僕が働きだしたころ教えてもらったのは「指3本分」離しなさいと教わりました。
確かにシャントエコーなどで吻合部近傍の狭窄好発部位は大体その範囲内(吻合部から5㎝以内)にあるような気もします。
いずれにしても、吻合部からある程度距離を取ったほうがいいのは間違いないです。
また、Y字に分岐しているなど分岐部に針先が来ないようにする(狭窄になりやすい)・屈曲部に針先が来る(脱血不良になりやすい)など針先がどこに留置されるかをイメージして穿刺部位を決めましょう!
返血部の穿刺場所
返血部の穿刺場所は基本的に脱血部と近すぎない場所と言われていますが患者さんのVA状態にも左右されると思います。
再循環にならない程度に距離が離れていれば大丈夫です。
返血部の場所は「臨床工学技士のためのバスキュラーアクセス日常管理指針ー穿刺業務指針」で図で示されている範囲が使用できる返血部の範囲です。
注意点として、脱血部と同様に分岐部や屈曲部には針先が来ないようにしましょう。狭窄原因や静脈圧高値になってしまいます。
また、肘関節付近に返血部や脱血部とすると患者さんが透析中あまり動けなかったり少しの動作でアラームが鳴るということもありますのでVA状態を見ての判断ですが、可能なら可動域での穿刺は控えるように心がけましょう。
末梢側に向かって穿刺する場合
末梢側に向かって穿刺するとき針の持ち方を写真のように刺す人がいますが、初心者にはお勧めしません。
この持ち方では針が血管に入った「感触」がわかりづらく力も入れずらい為、穿刺スキルが未熟なうちは失敗の元になるのでやめましょう。
個人的にはこれで針を刺されると思うとちょっと心配してしまうかなと僕は思います。
入職当初、穿刺を教えてもらうときに末梢側への穿刺方法の一つだからといって教えてもらいましたが、明らかにやりづらいし針の持ち方も違うため失敗しやすい気がしてました。
実際にこのやり方をしている当院のスタッフでミス後のリカバリーができないケースが多いです。
では、どのように穿刺するかというと穿刺者が患者さんの頭側に回り穿刺を行います。
こうすることで、返血側への穿刺と同様な形で穿刺ができます。
無理に体をひねった体制で穿刺をするのも失敗の元で、基本的に穿刺は血管と穿刺者が直線状に並ぶようにするのが力加減や体勢的に無理がなくやりやすいと思います。
僕は装置が邪魔な場合は穿刺前に装置を横にずらしたり、患者さんの枕元に座って穿刺したりもしています。
最後に
今回は穿刺針の持ち方や角度のつけ方・穿刺場所について簡単に解説してみました。
新人さんは入職時に透析室配属になる場合が多いと思います。
その時先輩について回ると思いますが、ぜひ先輩が穿刺の際は横から全体を見てこの人に対してはこの角度にしてる・なぜこの場所に針を刺すのだろうか?
自分ならここだと思う。穿刺の姿勢はどうしている?など考えて見学してみてください。
そうすることで、いざ自分が穿刺者に回るときに力になると思います!