β2-ミクログロブリン吸着フィルター(リクセル)について
施設での勉強会で株式会社カネカメディックスさんに来てもらいβ2-ミクログロブリン吸着フィルター(リクセル)についての勉強会をしてもらったのでその報告です。
透析アミロイド症の原因物質β2-ミクログロブリン
β2-ミクログロブリンとはどのようなものかというと、
分子量:11800 dalton
産出量:2~5mg/kg/日(体重50kgとした場合、1日100~250mg生成される)
正常値:0.5~2.0mg/L
代謝:糸球体基底膜でろ過され、近位尿細管で再吸収されたのちアミノ酸に分解される。
透析患者さんの場合、代謝機能が低下している為体内に蓄積され続けてしまう。
透析アミロイド症の予防や治療
予防には透析アミロイド症の原因物質となるβ2-ミクログロブリン(β2-MG)をできるだけ体内にためないことが大切とされており、日本透析医学会が作成した「慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン」では、透析アミロイドーシスに伴う骨合併症の発症・進展を遅延させるためには、血液浄化療法の工夫をすることが望ましいとされています。
具体的な予防・治療策としては、
- ハイパフォーマンスメンブレンを使用する。
- 血液透析濾過を行う。
- β2-MG吸着カラムを使用する。
しかし、内科的・外科的いずれの治療でも症状を軽減す治療に限られているようです。
ですのでいかにβ2-MGを体内に蓄積させないかが重要になります。
β2-ミクログロブリン吸着フィルター(リクセル)
カラム内には多孔質セルロースビーズが充填されており、ビーズの表面に疎水性のリガンドであるヘキサデシル基を結合させることで、細孔に入ることができる物質のうちβ2-MGの様な疎水性のものが選択的に吸着されます。
大きさによるプライミングボリューム
S-15 | S-25 | S-35 | |
充填容積(ml) | 150 | 250 | 350 |
プライミングボリューム(ml) | 65 | 105 | 177 |
やはり一番大きいサイズではそれなりなプライミングボリュームを必要としていますね・・・
β2-MG吸着フィルター使用による血圧低下の対応
β2-MG吸着フィルター使用の際に起きる血圧低下は体外循環量の増加が一因と考えられ対応として、
-
β2-MG吸着フィルターを初めて使用する際は体重増加の多い週はじめを避け、週半ばの水・木に開始する。
-
同時穿刺をする(プライミング液を廃棄しない)
-
透析のみでも血圧が下がりやすい症例には、昇圧剤の使用や高浸透圧液の使用などを検討する。
-
特に初回導入時のQBや除水速度をゆっくり上昇させて治療を開始する。
注意:上記の対応はカネカメディカルさんから頂いた資料に書かれているものです。当サイトでは上記の対応を取られても一切責任を負いません。
引用:透析アミロイド症へのリクセル治療 UP TO DATE P07 KANEKA MEDICAL PRODUCTS
取付位置について
基本はダイアライザーの前としているそうです。
ですが、施設によりダイアライザーの後に接続していたり今後の学会発表などで意見が交わされると思います。
オンラインHDFではヘモダイアフィルターの前につけるの?
上記質問もしてみたところ、保険適応基準に人工腎臓(血液透析に限る。)とされておりメーカーとしては血液透析のみに使用してくださいとしか言えませんが、学会などでそういった発表や施設によりオンラインHDFで使用されていると聞いたこともあり認識はしているそうです。
大きさの選定基準は?
この質問に対してのメーカーさんの回答は、基本は一番小さいところから始めていき徐々に大きくしていくのがいいと思われますとの回答でした。
効率に対してもやはりい大きいほうが吸着量に対しては小さいものと比較すると差は出るとの回答でした。
プライミング時気泡が混入した場合どうしたらいい?
入職当時よりプライミング時に気泡を入れるな!と教わりましたが、メーカーさんからの回答は、最近全自動コンソールに対応となり同時洗浄が可能となっているのである程度の気泡は洗い流す事で対処が可能とのこと。
ただ、気泡混入は避けたほうがいいのは確かでしょうしオンラインプライミングをやられていない施設はこれまで通り気泡は入れないに越したことはないように感じています。
全自動コンソール対応機種
機種名 | 製造会社 |
NCV-2 | ニプロ株式会社 |
DCS-100NX | 日機装株式会社 |
TR-3000MA | 東レ・メディカル株式会社 |
GC-110N | 株式会社ジェイ・エム・エス |
注意:2018年1月情報 他のコンソールについては随時検証中とのこと。
プライミング方法(2019年1月8日追記)
プライミング方法には全自動式とマニュアル式がありますが、当院が採用しているのはマニュアル式。
今までAチャンバー→β2₋MG吸着フィルター→補助回路→排液(650ml生食を流す…なぜこの量なのかはわかりませんが)でしたが、販売元に問い合わせたところ
Aチャンバー→β2₋MG吸着フィルター→補助回路→ダイアライザー→Vチャンバー→排液でも大丈夫とのこと。
つまり、ダイアライザーとの同時洗浄がマニュアル式でも可能ということです!
β2₋MG吸着フィルターにはクエン酸が含まれた液体が充填されていますがそれがダイアライザーに影響を及ぼすというデータは示されていないそうです。
ただし、メーカー側からはプライミング量として1.5L以上は流してほしいとの回答でした。
最後に
日本透析医学会の統計調査ではβ2-MG吸着フィルター適応条件の一つである透析患者さんの手根管開放術が減っているそうです。
患者さん自身が諦めたり、我慢している可能性も示唆されており僕たちスタッフがもう少し気にかけて整形外科受診などを進めてあげるのも大事なのではと感じました。
ちなみに、手根管開放術の件数ですが透析患者さんは減少傾向ですが他の要因(スマホを使いすぎてなど)は増加傾向で全体としての件数は横ばいなんだそうです。
スマホ使い過ぎ・・・気をつけねば!
参考文献
透析アミロイド症へのリクセル治療 UP TO DATE KANEKA MEDICAL PRODUCTS