今回はコンソール(透析用監視装置)の構成部品の一つである、複式ポンプについて解説します。
コンソールは各メーカーごとに透析液の供給・排液や除水制御方式が異なり今回紹介する複式ポンプはその中の1メーカーの制御方式で使用される部品となります。
複式ポンプはコンソールの中でも要の部分で、臨床工学技士による定期的な点検やメンテナンスを行う部品の一つです。
複式ポンプってどんなもの?
複式ポンプは、等量のシリンダ内を白い陶器のような物(ブランジャ)が左右に動くことでポンプ内に供給した新鮮透析液と同量の使用済み透析液を回収する動きを行います。
シリンダの出入り口(新鮮透析液側・使用済み透析液側)にポペットバルブと呼ばれる逆流防止の役割をもった弁が使用されており、この部品により一方方向にしか流れないようになっています。→密閉回路を形成しています。
除水ポンプとの関係
新鮮透析液と同量の使用済み透析液がシリンダ内に入るため、除水を行うには除水ポンプと呼ばれる物が使用されます。
除水を行う場合、ダイアライザーからの使用済み透析液は複式ポンプで送られた新鮮透析液量+除水ポンプで引き込んだ量となります。
複式ポンプ吐出曲線
給液側のポンプがダイアライザーへ新鮮透析液を吐出しているとき、排液側ポンプはダイアライザーから使用済み透析液をシリンダの使用済み透析液室内へ吸い込みます。
次に給液側が新鮮透析液をシリンダの新鮮透析液室内へ吸い込んでいるときは、排液側はシリンダの使用済み透析液室内から吐出します。
透析液流量が500ml/minであれば2sec周期で繰り返す動きをします。
勤め先での複式ポンプのメンテナンス時期紹介
勤め先での複式ポンプメンテナンス時期は、稼働時間と電圧で見ています。
稼働時間:6000時間以上
電圧:稼働時0.3V以上(給・排液側どちらか)
この二つのうちどちらか超過しているあるいは、急激な電圧上昇が起こっているなどあれば適宜コンソールから複式ポンプを取り出し清掃と部品交換を行っています。
電圧変化を確認するようになったのは、6000時間以内でも電圧が0.7V以上でアラームが鳴ることがよくあったためです。(確かデフォルトの警報点設定は0.7Vだったと思います)
このアラームが鳴った場合は、ベッド移動を行っていたため患者さんに対して不安を与えたり・ベッド移動の際に除水設定ミスがあったりしたためそういったことを未然に防ぐためにも定期的な電圧の確認を行っています。
主観になりますが、大体0.3V以上になっているとシリンダ内に錆が多く出ています。
ちなみに錆の除去は、700番手の耐水性紙やすりをまず掛けて1000番手の耐水性紙やすりで同じところを磨き、滑らかになるようにしています。
紙やすりを使用しなくても取れそうな錆は固めのスポンジで擦ったりもしています。
最後に
今回は透析用監視装置の要である複式ポンプの解説を行いました。
実はこの複式ポンプの部品交換はあまり得意ではなく大抵水漏れを起こしてしまい、一発で決まらないことが多いです…
ネジの締め込み順などにも気を付けながら行ってても少しずつ水漏れしていたり(汗)
また、錆の影響を強く受けるところなので部品が固着していたりしてなかなか取り外せなかったりと力が弱いのでいつも悪戦苦闘です。
メーカーさん!力が弱い人でも簡単にメンテナンスが行えるようにしてくれるとうれしいです‼
参考文献
山本 淳 2018年 認定血液浄化指定講習会テキスト P102~103 透析関連機器と管理 公益社団法人 日本臨床工学技士会
保守管理技術研修テキスト DCS-73 ビギナーズコース 日機装株式会社