様々な病院をはじめ、介護施設や家庭でも使われるようになったパルスオキシメータ。
非侵襲的に動脈血の酸素飽和度を測定できる便利な機械で、在宅酸素などを使用している患者さん自身が使用できるほど簡単な操作方法であるため全国で一体いくつ使われているんだろう?と思うくらい使用されています。
今回は、このパルスオキシメータについて解説していきたいと思います。
パルスオキシメータとは
動脈血ヘモグロビンの酸素飽和度(SaO2)を指や耳朶などに小型のセンサを装着して無侵襲かつ連続的に測定します。
原理としては赤色光と赤外光の波長の違う2種類の光を当てることで、酸素化ヘモグロビンと非酸素化ヘモグロビンの吸光度の違いあるいは反射の違いを利用して測定されています。
赤色光の波長:660nmで非酸素化ヘモグロビンの吸光度が高く、人の目には見える光。
赤外光の波長:940nmで人の目には見えない光。
赤外光は酸素化・非酸素化ヘモグロビンの吸光度差は赤色光と比較して変化は少なく透過します。
つまり、酸素が多くとりこまれた血液では赤色光は透過するので、センサーが受け取る二つの光の吸光度の比率を求めれば酸素飽和度がわかります。
黄色の丸の部分が、赤色光と赤外光を出すダイオードです。
これが、電源を入れるとこのように光ります。
赤外光は目に見えないのでわかりませんが、赤色光は赤く光っています!
パルスオキシメータの不調で臨床工学技士が呼ばれた場合は、この光が出ているかをチェックします。
(出ていなければ断線・接続不良などが考えられます)
測定には動脈性の拍動時に変化する成分を取り出しているので、測定条件で拍動(脈波)が重要な要素となっています。
脈波を使うため、心拍数の測定も可能となっており機種によっては表示されていたりします。
測定値を表す記号として、[SpO2]を用い単位は[%]となります。
測定される数値は全ヘモグロビンのうち、酸素化ヘモグロビンの割合を%表記しています。
動脈血酸素飽和度を知ることは、血液とガス交換を示す換気機能といった呼吸による換気・分布の総合的評価を行う上で非常に重要となっています。
その為、呼吸器を使用している患者には装着され使用されています。
正常値
正常値は一般的に、96~99%
95~91%で注意が必要、90%以下では何らかの対処が必要とされています。
ですが、年齢や元々の疾患・状態により目安となる数値は変わりますので患者さんの状態を観察し評価することも大切です。
パルスオキシメータ使用時の注意事項
- ショック状態では用いない(脈波が検出できない。これを逆手にとって簡易的に心拍の確認をすることもあります。)
- 指での測定時にはマニュキア等落としておく(吸光度が変化し正しい値が出ない)
- 太陽光が当たる場所で測定しない(光による影響を受ける)
- 末梢循環が悪い部位で測定しない(脈波が検知されにくい)
- 連続使用時は定期的に位置をずらす(プローブは低温ですが発熱するので熱傷対策で位置をずらす必要がある)
- テープなどを用いて指につけるプローブを固定しない(褥瘡や測定値にも影響が出ます。緩いのであれば交換をしましょう)
- 体動が多いと検知しづらい。
- 無拍動型人工心肺装置使用時(拍動がないので正確な測定ができない)
- 一酸化炭素中毒やメトヘモグロビン血症患者への使用(正確な値が測定できない)
- 高周波の影響を受ける(電気メスなど)
パルスオキシメータの測定実験
上記注意事項で、マニュキュア等の影響を受ける・末梢循環が悪い部位では測定しないとしましたが、実際にどのくらい変化があるのか試してみました。
マニュキュアで数値の変化がどの位あるのか
我が家ではマニュキュアを使用する人はいませんでしたので、今回は指に油性ペン(黒)で色を塗って変化があるか観察してみました。
結果は・・・測定できました!
数値が低く出るのかと思いましたが、全くの正常値(99%)でした。
ラメ入りのマニュキュアやもっと濃くて厚く塗れば測定誤差は起こるかも・・・
末梢循環が悪い部位では測定しづらいのか?
末梢循環が悪い所=指先など冷たくなっている所ということでしばらく氷に当たってすぐ測定してみました。
結果は・・・こちらも測定できました(測定値99%)!
結構冷やしたつもりでもしっかりと計れてました。
意外と最近の機種は測定感度がいい?
ちなみに使用機種は、ネットでも買えるレベルの物を使用しました。
最後に
パルスオキシメータは生体への装着が簡単で、患者への負担も少なく無侵襲であり呼吸と循環の情報を得られる便利な機械です。
様々な場所で活躍する機器でもあるため目にすることも多いと思います。
ですが、時に数値に振り回されて酸素濃度をどんどん上げたりといった事も・・・
まずは患者さんの呼吸状態や測定部位などもきちんと確認したうえで使用し評価することが大切ではないかと思います。
またパルスオキシメータについては、波長の数値・注意事項などME2種や国家試験でも見られるので学生の人はぜひ覚えておいてください!
参考文献
小野 哲章・峰島 三千男・堀川 宗之・渡辺 敏(編集),臨床工学技士標準テキスト,金原出版株式会社,2007年[P325]
木村 雄治,生体計測装置学入門,株式会社コロナ社,2008年[P72~75]
桜井 靖久(監修),MEをめぐる安全,[ME早わかりQ&A],株式会社南江堂,2006年[P189]
パルスオキシメータの原理, コニカミノルタ, 2019/11/28, URL:https://www.konicaminolta.jp/healthcare/knowledge/details/principle.html