臨床工学技士がシャントエコーを行うに事について

2021年5月21日に第204回国会 (令和3年常会) 「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が成立しました。

この法律により医師の働き方改革に関するタスクシフト・シェアを推進する為、臨床工学技士法が改正され新たに業務範囲が追加されます。

この件に関して、第31回日本臨床工学会での口演がありました。

その中で個人的にうれしかった、「現行法での解釈で可能とされる業務」に、バスキュラーアクセス管理を目的とした臨床工学技士のシャントエコーが認められたと本間理事長や他の技士会関係者から発表されました

そこで今回この「臨床工学技士によるバスキュラーアクセス管理を目的としたシャントエコー」について思った事を書いていきます。

現状の状態

グレーゾーンと呼ばれる業務であり、都道府県によっては臨床工学技士が行ったシャントエコーは診療報酬の請求は不可となっている。
臨床工学技士がシャントエコーを行うことに関してはあまり問題となっておらず、「診療報酬の請求」が問題視されていた。

2016年4月に発行されている臨床工学技士のためのバスキュラーアクセス日常管理指針「初版」によれば、サーベイランス指示書を作成し医師による指示を受けてのシャントエコーをはじめとしたVAモニタリングが推奨されている。

また、2013年に実施された「臨床工学技士に関する実態調査施設アンケート」によればVAへの穿刺もしくは管理に超音波診断装置の使用をしているが49.2%(n=914)とほぼ半数近くがVAに対して超音波画像診断装置を使用している。

さらに臨床工学技士免許のみで超音波画像診断装置を使用している割合は78.7%(n=306)とほとんどがシングルライセンスで行っている実態もある。

7年前のデータであるため現在はさらにシャントエコーを行う施設と臨床工学技士は増加していると思います。

そしてタスクシフト・シェアの有識者による会議の中で臨床工学技士のシャントエコーが項目として上がりました。

 

第31回日本臨床工学会での口演

第31回日本臨床工学会での口演抜粋
法改正を行わずとも、現行法での解釈で臨床工学技士がシャントエコーを行ってもよいことになった。
2021年10月1日より診療報酬上の請求が可能となる。

上記は本間理事長より発表があった事です。

これについて発表をリアルタイムで聞いていたためTwitterでつぶやいたところ、多数のリアクションが!

 

なんでも屋ME
みんな気になる項目だったのだと思います!

 

今までいろいろな思惑に振り回されたり、時にはひどい言葉も同僚から浴びせられたりとくじけそうなときもありましたが何とか報われる方向に向かいそうで感無量でした。

 

今後を自分なりに予想

臨床工学技士が行うシャントエコーの診療報酬算定が認められることによって、シャントエコー件数は飛躍的に増加していくと予想しています。

D215 超音波検査(記録に要する費用を含む。)
2 断層撮影法(心臓超音波検査を除く。)
ロ その他の場合
(3) その他(頭頸部、四肢、体表、末 梢 血管等)
350点
今日の臨床サポート

診療報酬は2021年では上記となっており、これにパルスドプラを使用した場合加算が加えられます。(1患者月1回のみ)

今後検査数増加に伴い診療報酬は減少していくと予想しています。

VA日常管理加算という新たな診療報酬項目の追加を目的とした動きもあり、最終的にはシャントエコーはこの診療報酬項目の算定に必要な条件として組み込まれ現在の診療報酬算定が出来なくなるのではないかと思います。

いずれにしても社会保障費の医療分野予算は決められた額の中からどう振り分けていくかなので、新たな項目が新設された場合既存の項目での診療報酬は減少させねばならないでしょう。

減少させるにはうってつけの機会であり、内容的にもあり得そうなことだなと勝手に予想しています。

 

今年度も臨床工学技士に関する実態調査施設アンケートは企画されるはずなので、臨床工学技士によるシャントエコーの項目があれば結果がどうなっているのか気にしてみようと思います。

 

2023年6月の追記

日本臨床工学技士会より、医政発0930第17号として厚生労働省医政局長から公益社団法人日本臨床工学技士会理事長あての文書が公開されました。

tasukushifutosyea-R3.9.30.pdf

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その中で、シャントエコーについて書かれた、文面があります。

⑦ 血液浄化装置のバスキュラーアクセスへの接続を安全かつ適切に実施する上で
必要となる超音波診断装置によるバスキュラーアクセスの血管径や流量等の確認
血液浄化装置の先端部のバスキュラーアクセス(令和3年 10 月1日前において13
は、シャントに限る。以下同じ。)への接続を安全かつ適切に実施するためには、
血液浄化装置の先端部のバスキュラーアクセスへの接続を行う際に、バスキュラー
アクセスの血管径や流量等について、超音波診断装置を用いた確認が必要となる場
合がある。血液浄化装置のバスキュラーアクセスへの接続を安全かつ適切に実施す
る上で必要となる超音波診断装置を用いたバスキュラーアクセスの血管径や流量
等の確認については、臨床工学技士法第2条第2項の「生命維持管理装置の先端部
の身体への接続」に含まれるものと解され、医師の具体的指示の下に臨床工学技士
が行うことが可能である。
臨床工学技士による超音波診断装置を用いたバスキュラーアクセスの血管径や
流量等の確認に当たっては、養成機関や医療機関等において必要な教育・研修等を
受けた臨床工学技士が実施することとするとともに、医師の具体的指示の下、他職
種との適切な連携を図るなど、臨床工学技士が当該行為を安全に実施できるよう留
意しなければならない。

引用
医政発0930第17号

文面上は、教育・研修等を受けた者が行うようにすればシャントエコーは行っても良いようにもとれます。

臨床工学技士によるシャントエコーの診療報酬に関しては、具体的に明示された文章がなく、診療報酬の算定も都道府県により様々なようで全国的に統一見解はまだ示されていないように思えます。

勤め先では臨床工学技士が行う場合、医師による具体的な指示を示した書類(臨床工学技士のための バスキュラーアクセス日常管理指針を参照)・検査報告書(エコーの写真なども含む)がセットでカルテ内にあることが最低条件と考えられるため、これだけは必ず守るようにして行っています。
※すべてが算定されているわけではないようです。詳細は自身の権限では確認できておらず、担当医師より伝えられました。

 

参考文献
公益社団法人 日本臨床工学技士会,臨床工学技士のためのバスキュラーアクセス日常管理指針[初版],2016

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